BLOG ブログ

内装解体とは? 工事の手順から内容、流れ、注意点まで解説

内装解体とは? 工事の手順から内容、流れ、注意点まで解説

内装解体とは?

内装解体を終えた様子
内装解体とは、建築物そのものではなく内装部分のみの解体を指します(運搬、撤去、処分まで含みます)。オフィスや店舗をオーナーや管理会社に明け渡す際に必要な作業です。
また、物件の引き払いに限らず、フロア改装の際も行われます。
会議室にある間仕切りの撤去や、店舗内のレイアウト変更の場面などがまさにそうです。
加えて、定義される内容こそ若干異なりますが、細かくはスケルトン工事や原状回復といった種類にも分けられます。

スケルトン工事とは?

スケルトンとは、建物自体の骨組みです。
そしてスケルトン工事とは、内装の一切を取り払い、文字通り骨組みだけ残す作業を指します。
床、天井、エアコン、電気配線、排気ダクト……等々、あらゆる設備が解体、撤去される工事です。
建物の構造体以外は空っぽ、(鉄筋コンクリートのビルであれば)俗にいうコンクリート打ちっぱなしの状態になります。

なお、工事のタイミングは主に内装を一新する予定がある時です。
また、スケルトン工事以外には“スケルトン戻し”“スケルトン仕上げ”などと呼ばれることがあります。

原状回復とは?

原状回復とは、(借主が)物件を返却するにあたって、借りた時の状態へと戻す工事のことです。
仮にスケルトンの状態で借りていたならば、スケルトン工事が原状回復に該当します。
たとえば、飲食店や美容室などの店舗を借りる際、大抵は床や壁、天井などがありません。この場合は、スケルトン工事で原状回復を行います。
一方で、オフィスなどではすでにいくつかの設備が揃っていることも少なくありません。明け渡す際には、いわばその状況を再現しなければならないため、契約時、漏れなく確認することが大事です。

なお、ほぼ同じ意味で用いられる言葉に「原状復帰」があります。
その違いは微々たるものです。
一つは、原状回復が法律用語であるのに対し、原状復帰は建設用語として使われます。また、元に戻した状態ではなく戻す行為そのものを指す場合、“復帰”の方が一般的です。
このように厳密には区別できます。といっても、あくまで関わる人同士で通じれば、どちらの言葉であっても特に支障をきたすことはないでしょう。

内装解体が行われる建物の主な対象

テナント、店舗、オフィスなどさまざまな場所で内装解体は行われます。
出店や立ち上げで利用する際は、セットで考えておけると良いでしょう。
下記、内装解体が行われる建物の主な対象を挙げます。

・レストラン
・居酒屋
・リラクゼーションサロン
・ヘアサロン
・事務所
・アパレルショップ
・リテールショップ

これらの運営には、撤退や移転がつきものです。
立つ鳥跡を濁さず。返却するに至った際は、然るべき対処のもと不備なく綺麗に内装解体を済ませましょう。

内装解体工事における大事な準備、その手順

内装解体を行う前に必要な調査
工事全般でいえることですが、内装解体もまた事前の準備が大切です。
たとえば、工事を始める前に借主は貸主との認識を共有しておく必要があります。
また、解体業者の選定や電気・電話・ガス・水道といったライフラインの停止にも気を配らなければなりません。
以下、大事な準備、その手順をタイミングも踏まえたうえでお伝えします。

解体内容、契約に関する打ち合わせ

前述の通り、借主と貸主の打ち合わせは必須です。
不明点や曖昧な部分をあらかじめクリアにしておかなければ、先には進めません。
工事の第一段階として、両者の納得のもと合意形成を図り、方向性をきちんと定めるようにしましょう。
スケルトン工事や原状回復など解体内容に関することはもちろん、期間や費用に関する契約事項、あるいは項目上記載のないイレギュラーな事態に対する処置など、それぞれ細かく意見を擦り合わせることが大事です。場合によっては「都度、両者での話し合いによって決定する」といった柔軟な対応も必要かもしれません。
視野も可能な限り広げ、次に入ってくる店舗や利用者のことまで考えられると尚良いでしょう。

内装解体を行う業者の選定

打ち合わせが終われば、次に行うのは解体業者の選定です。
貸主と決めた話をもとに、一連の計画においてふさわしい業者を選ぶようにしてください。詳しくは後述しますが、失敗しないためにもポイントをおさえたうえで慎重に行いましょう。
また場合によっては、貸主が選定に加わりたい意思を示してくることもあります。
そうした状況を想定しながら、打ち合わせの段階で業者選定まで行うのもおすすめです。

解体業者による現地調査

解体業者が決まれば、続いては現地調査です。
口頭や書面で施設内の状況をつぶさに伝えていたとしても、やはり百聞は一見に如かず。業者の方には実際に目で見てもらわなければ、認識に少なからず齟齬が生じる恐れがあります。そうなると、工期の遅延や予定外に発生する工事費の追加など諸々代償を支払うことになりかねません。
確実に調査は必要です。見積りの段階に限らず、一旦契約した後も詳細を詰めるべく現地に訪れてもらうように手配しましょう。

なお、現地調査のポイントは建物の状態を知るだけではありません。
近隣状況についても把握しておくことが大切です。
たとえば、同じ建物のテナントには他のお店も入っていることがほとんどだと思います。そうなると、なるべく迷惑を掛けないための配慮が不可欠です。営業時間を避けたスケジュール調整、隣接する店舗の特徴を加味した作業内容の組み立てなど、事前調査を介して柔軟に対応しなければなりません。

同じ建物内の店舗、近隣住民への挨拶

同じ建物に入っている店舗に対しては、状況の把握に留まらず工事へのご理解をいただく必要があります。そのため、内装解体の施工前には挨拶回りが欠かせません。
当然、近隣住民に対しても同様です。
最大限の防止策を取りつつ、騒音や振動についてなどきちんと理解してもらわなければ、トラブルに発展する恐れが出てきます。工事の概要は、業者とともにきちんと伝えることが重要です。ぜひ、誠意を持ってご挨拶に伺うようにしましょう。

なお、あらかじめ建物のオーナーから入居者へ連絡しているケースも少なくありません。そうなると比較的、話は早いです。したがって、業者やオーナーとはなるべく強固な協力体制を築くことが望ましいと考えます。

残置物、残留物の撤去処分

内装解体が開始される前までに、自身で処分できるものが無いかどうか確認しておくと良いでしょう。
もちろん、併せて解体業者に頼むこともできます。しかし、予定外の作業が発生すればその分、工期や費用に影響を及ぼす可能性があります。一方で、買い取ってもらえるものもあるかもしれません。そうなると思いもよらず利益が生まれることになります。
いずれにせよ、内装解体を行う前には、不用品について一度見直しを図ることが大事です。

詳しい処分方法についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
家具の処分方法~持ち込み、運び出し、解体など捨て方のコツを解説~

電気・電話・ガス・水道などの契約停止(確認)

電気・電話、ガス・水道などのいわゆるライフラインに対して、特に問題無ければ停止するよう契約会社に連絡しましょう。
他方、例外として考えられるのが以下のケースです。
・建物全体でオーナーが契約している
・解体後に新たなテナントが利用する
・解体工事中に業者が利用を希望する

上記においては、安易な行動(停止)を控え、あらためて確認することが必要です。
だからこそ、事前の打ち合わせが肝要だと分かります。
ライフラインの停止に関しても確実に話し合っておくようにしましょう。

内装解体に際しては、一貫して関係各所との連携が必須です。
しっかりと念頭に置くようにしてください。

内装解体工事の具体的な内容、流れ

内装解体の工事風景
一通り準備が整えば、いよいよ実際に工事開始です。
業者に一任することもできますが、なるべく全体の流れは施工主自身でも把握しておくことをおすすめします。
それでは、具体的な内容と併せて紹介します。

足場、養生の設置

建物の解体工事全般がそうであるように、内装解体の際も足場、養生の設置を行います。足場に関しては状況によっては不要なケースもありますが、養生の場合、確実かつ慎重に対応しなければなりません。というのは、工事で発生する埃や粉塵が、同じ建物内のオフィスあるいは店舗に飛散してしまう恐れがあるからです。騒音や振動の防止においても同様だといえます。入念な養生は欠かせません。
また、工事によって生じるごみ、廃棄物の搬出路としておそらくエレベーターや階段などの共有スペースが使われると思います。周辺に傷をつけてしまうといった粗相は、当然厳禁です。内装解体後のことまで考え、養生でしっかりと覆うようにしましょう。

内装材の撤去作業

足場、養生を設置した後は、電気・壁紙・ガラス・ドアといった内装材の撤去へと移ります。
この作業で肝心なのは分別です。
とりわけ、電気の取り外しは注意しなければなりません。蛍光灯と安定器は分別方法が異なります。
当然、安全面にも気を配りましょう。部品の中に人体へ影響を及ぼす物質が含まれていることまで最大限ケアする必要があります。
また、壁紙を剥がす際には粉塵が発生しやすく、吸引防止のため、マスク・ゴーグルの着用が必須です。
ガラス類も取り扱いにはくれぐれも細心の注意を払うようにしてください。
なお、ドアに関しては、今後も使用するもの(処分しないもの)であれば、保護シートで覆って保管し、依頼主に返すのが一般的です。

床材の撤去作業

必要に応じて床材の撤去作業も行われます。
種類、素材によって使用している接着剤や糊が異なるため、剥がす際は注意が必要です。もちろん、下地を傷めないように慎重に行います。亀裂や凹凸、ひび割れが発生してしまった場合は、必ず補修するようにしてください。
また、次に床材を貼る時にしっかり密着するように、下地の汚れや錆落としに加え、素地を調整すべくあえて表面に細かな傷をつける「床ケレン」も施しておきましょう。

このように、一つひとつ、実に丁寧な作業が求められます。
なお、諸々の工法については、解体業者の判断に任せるのが無難です。

廃棄物の処分

床材の撤去の後は、解体工事で発生した廃棄物の搬出・処分を行います。
当然、産業廃棄物処理法の規定に則って適切に対応することが必須です。
決して不法投棄や敷地内での隠蔽行為に及んではいけません。
また、処分の際は、マニュフェストと呼ばれる産業廃棄物の管理票を解体業者側に提出してもらってください。この書面によって産業廃棄物の処理の流れが明示されます。具体的に記載される内容は、廃棄物の種類や数量、運搬業者名、処分業者名などです。

室内の清掃作業

廃棄物の処分後は最後の仕上げに室内の清掃作業を行います。
次の利用者に気持ちよく借りてもらえるよう、綺麗に掃除し返却しましょう。
場合によってはリフォームまで行うケースもあります。
その辺りも含めて貸主と事前に打ち合わせできていれば、スムーズに事を運べるでしょう。

内装解体工事の注意点

危険な内装解体工事
内装解体工事を行ううえで、手順や流れ以外に当然いくつか注意点は存在します。
大まかに述べると、費用や工期、専門用語の共有、業者選定です。
それぞれ要所をしっかり見極めましょう。

費用面と工期について

まず見積り依頼の際は、希望の作業範囲を明確かつ具体的に指定するようにしましょう。曖昧なままで話を進めた場合、実際は必要でない作業(費用)まで計上されるかもしれません。
また、業者に対して現場への立ち会いは可能な限りお願いするようにしてください。金額交渉もその方が円滑に回ります。
往々にして、内装解体に掛かる費用が相場通りとは限りません。建物に含まれる材料の除去などは現場を見ずして事前に判断することはまず不可能です。
そして、いざ解体開始にあたって想定外の事態に見舞われれば、費用もさることながら、当然、工期の遅れにもつながります。逆にいうと、現場への理解が共通認識として関係者全員に共有されていれば、ある程度スケジュール管理はしやすくなるはずです。

A工事、B工事、C工事

内装解体が行われるなかで、関わる人同士のコミュニケーションはどうしたって大事です。滞りなくプロジェクトを遂行すべく、打ち合わせ時はもちろん、普段の何気ない会話にも注力される方も少なくないでしょう。しかし、時に専門用語を理解していないばかりに認識の齟齬からトラブルを招くケースもあります。聞き慣れない言葉を耳にした際は、放っておかず、その場でしっかり確認するようにしてください。

たとえば、内装解体の現場では、A工事、B工事、C工事と呼ばれる専門用語に、見るなり聞くなり出くわすことがあります。

それぞれ区別すると、建物の貸主であるオーナー発注の場合はA工事です。費用は貸主側が負担します。作業が行われる場所は主にトイレ、エレベーターなどです。
B工事では借主側が工事の要望を出し、費用も負担します。ただし、発注は貸主です。主に防災設備や空調設備の工事が該当します。
費用を負担する借主側が発注まで行うのがC工事です。もちろん、貸主側の許可は事前に必要です。大抵の場合、内装解体はC工事に当てはまります。

業者選定にあたってのチェックポイント

業者選定は慎重に行わなければなりません。
「現場に立ち会わない」「見積りの内訳が無い」「実績不明」といった会社に頼むのはあまりに危険です。
「要望をしっかり聞き入れてくれる」「状況に応じたプランを提案してくれる」「連絡など迅速に対応してくれる」「実績豊富」……等々、安心できる要素を湛えているか否か、しっかり確認するようにしてください。

内装解体への理解を深め、適切な判断で以て対処しよう!

知識や判断力が試される内装解体工事
何も知らない状態で内装解体を行うことは、さすがに多くのリスクが伴います。もちろん、持っている知見が漠然としていても同様の結果を招くはずです。
仮に(内装解体を)検討中であれば、基本的な概要、工事に際しての準備や手順、具体的な内容、流れ、注意点、安心できる業者選定に至るまで、極力知識を増やし、理解を深めるようにしましょう。
本記事にて少なからずそのお手伝いができたならば幸いです。

ぜひ、周囲への目配りと併せて、適切な判断で以て対処してください。